やぁ、Natscoです。
前の記事では、『スラムダンク』にハマった勢いのまま、高体連からデータを拝借し、マンガと競技人口のかかわりを探ってみました。今回はせっかくなので、その際除外となった野球部について着目してみたいと思います。
野球マンガの系譜
まず、野球マンガって、いっぱいあります。
マンガの歴史はそのまま野球マンガの歴史、と言ってもよさそうなくらい、その時代に即した作品が存在します。
ちょこちょこと掻い摘んでいるレベルなので、この機に野球マンガの歴史についてさらってみようと思います。
なお、今回はこちらの「野球マンガ大解剖 (サンエイムック)」を参照し、野球マンガの世界をのぞいてみました。とても丁寧に、深く切り込んだ雑誌で、知らない作品に興味をもつきっかけになりました。おすすめです。
口コミを見ると、ちょこちょこ誤植があったりなんだりするらしい。細かいことは気にしない。
野球マンガの系譜を覗く
こちらの雑誌では、野球マンガを分類し、9つのジャンルに分けています。ここではそれに倣って野球マンガの流れを追ってみます。網羅したものではありませんので、ご了承ください
黎明期 空想ほのぼの野球マンガ
最初の野球マンガは井上一雄による『バット君』(1947年)と言われています。
プロ野球が初めてテレビ中継されたのが1953年。また、リアルタイムで情報を届けるテレビの登場に応じるように、1959年の『週刊少年マガジン』や『週刊少年サンデー』など週刊誌が続々と登場。
『バット君』『スポーツマン金太郎』(寺田ヒロオ)など、さわやかな作風がある一方で、『ちかいの魔球』(原作:福本和也 漫画:ちばてつや)のように、次世代に影響を与える熱血ものもの登場も見られる黎明期です。
根性必殺技 野球マンガ
マンガの神様・手塚治虫の世界観と対極にあるような、劇画作品が登場。
その代表ともいえるのが『巨人の星』(原作:梶尾一騎 漫画:川崎のぼる)です。
高度経済成長で盛り上がった時代「欧米諸国に追いつけ追いこせ」の空気に呼応するような、努力と根性でライバルに立ち向かう、ド根性スポコン漫画の金字塔と言えるでしょう。
トンデモ超人 野球マンガ
スポコンがさらなる進化を遂げて大暴走したのが『アストロ球団』(原作:遠藤史朗 漫画:中島徳博)『侍ジャイアンツ』(原作:梶尾一騎 漫画:井上コオ)など。
魔球がどうとか、そういう次元ではなく、トンデモない技が次々と展開され、文字通りの死闘が繰り広げられます。
野球をよくわかってない私からしても、「ハイジャンプ魔球はボークなのでは…?」っていうか「人間ナイアガラ…?」いやいや、ルールとかそういう次元の話ではないのです。考えてはいけないのです。
本格リアル 野球マンガ
スポコンが超人マンガとして突き進んだ一方で、魔球の登場しない、より本格的な野球マンガが登場します。『キャプテン』で等身大の主人公を描いたちばあきお、『男どアホウ甲子園』『ドカベン』でリアルな野球を描いた水島新司です。本格マンガの勢いは、オイルショックと高度経済成長の終息とともに加速し、さまざまな作品が登場しました。
私の母は里中智のファンです。
青春ラブコメ 野球マンガ
バブル景気に突入すると、楽天的な空気を持ちこんだラブコメが人気を博し、『タッチ』(あだち充)とか『ジャストミート』(原秀則)が登場。一生懸命に野球する泥臭い本格マンガとはまた違う、ゆるーい作風が一時代を築き上げた。
その後、バブルの崩壊と呼応するように、ラブコメ路線は収束。『ジャストミート』の原秀則も本格リアルな『やったろうじゃん』をスタートするなど、再びリアル路線が主流となります。
『MAJOR』(満田拓也)『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ)『ROOKIES』(森田まさのり)『ダイヤのA』(寺嶋裕二)などもこの系譜に乗ります。
ROOKIES【期間限定無料】 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 森田まさのり
- 出版社/メーカー: 集英社
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MAJOR(少年サンデーコミックス)1~33巻セット リトルリーグ・高校
- 作者: 満田拓也
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/12/08
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私は横浜リトルの樫本監督とぎぬまっちがとても好きです。
その他の分類として、『すすめ!パイレーツ』(江口寿史)『逆境ナイン』(島本和彦)などの大爆笑&ファンタジー野球マンガ、『広島カープ誕生物語』(中沢啓治)『江川と西本』(原作:森高夕次 漫画:星野泰視)などのノンフィクション野球マンガ、選手でなく監督に主軸をおいた『クロカン』(三田紀房)や、スカウト視点で描かれる『スカウト誠四郎』などの多目的別視点野球マンガ、『タッチ』の30年後の明青学園を舞台とした『MIX』、『MAJOR』茂野吾郎の息子、大吾を主人公とした『MAJOR 2nd』といったリバイバル野球マンガなどがあります。
MAJOR 2nd(メジャーセカンド) 1 (少年サンデーコミックス)
- 作者: 満田拓也
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アニメ化決定!ありがとう!
このように、野球マンガは時代に呼応して変遷をみせてきたわけです。面白いですね。
高校球児は減っている?
ここからは、高野連からデータをお借りして、部員数の推移を見てみます。
こちらは、1982年から2017年の高校球児のグラフです。
こちらは、少子化とかそういうのを考慮せず、純粋に、登録者数のみをグラフにしたものです。ここ3年連続で部員数が減少しているということが話題になっていましたが、1982年から長ーい目で見ると、グラフは右肩上がりです。
この要因として考えられるのは、野球部員が部活を辞めなくなった、という点。
高野連の統計によると、1年生から3年生まで野球部員として活動した継続率は年々上昇。統計の始まった1984年には72.9%だった継続率は、最新のデータで90.9%を記録しています。これには、スパルタ的な指導が少なくなり、暴力禁止を打ち立てたことが関連していると言われているみたいです。なるほど。
野球マンガの影響は?
マンガの影響を探ってみよう、というのが当初の目的でしたので、先ほどのグラフに野球マンガ作品を乗っけてみました。伸びている矢印は「アニメ化」または「ドラマ化」といったメディアミックス展開が行われた年を示しています。見づらいですね。
あくまでも、データに従った憶測にすぎませんが、すこし考えうるマンガとの関連を述べてみたいと思います。
グラフ上、1985年をピークに一つ山ができています。これは、『タッチ』がアニメ化した年にあたり、発行部数1億冊を誇る今作が野球人口に影響を与えたと考えられます。(もしかしたらマネージャー志望はもっと増えたのではなかろうか)
『タッチ』の連載終了にあたる1986年には「名門 第三野球部」がスタート。野球マンガは絶えず生まれているわけです。
その後、2つ目の山の頂点となるのは、1991年。ここから一気に減少しています。
前記事、他の部活動でも一つポイントとなった1991年。キーワードはおそらく「スラムダンク」と「Jリーグ」の2つ。1990年に連載を開始した「スラムダンク」はバスケ部員を急増させたというのは前の記事でも確認できました。泥臭いイメージの野球よりも、なんかかっちょいいバスケに流れたのでは?という見方もできますし、バスケ部員の急増で同じ室内競技のバレー部員が減少傾向を見せたのと同じように、1991年に創設されたJリーグの影響で、サッカー部員が急増したことを考えると、同じ室外競技として野球部の人気が下がったとも考えることができますね。
一時14万人まで落ち込んだ野球部員数ですが、2004年には16万人に回復します。
それまでに起こったことと言えば、日本人選手のメジャー挑戦。1995年の野茂英雄、2001年のイチロー、2003年の松井秀喜などなど…。世界に挑戦する選手に憧れて、門を叩く野球少年が増えたことは想像に難くありません。
また、イチローは1972年より連載の始まった『キャプテン』に影響をうけたそうです。名門野球部から転校してきたことで勝手に期待されてしまった二軍補欠の谷口タカオを主人公にすえた、魔球もイケメンも登場しない、本格リアル野球マンガ。アニメのOP「君は何かができる」というタイトルが響いてくる、等身大でひたむきな野球少年にひきこまれます。
では、メジャーに挑戦する彼らに憧れる野球少年たちは、どんな野球マンガを読んだのでしょうか。
Amazonプライムビデオで見られます。哀愁漂うEDがすてきです。
MAJORと野球人気
最も有名な野球マンガのひとつとして思い浮かぶのは「MAJOR」です。
1994年に連載がスタートし、2010年まで全78巻に渡って主人公・茂野吾郎くんの野球人生を描いたまさに大河マンガです。
この作品は、高校野球に焦点をおいたものが主流だったなか、幼稚園児からスタートし、リトルリーグ、中学軟式野球、高校野球、そしてプロへ…と成長を描いたことで、野球マンガの中でも一線を画しています。
タイトル上、なんとかなるのは知っているけど、「吾郎くんが壊れてしまう…!」というシーンに何度もドキドキする、妥協を知らない彼に心を奪われる、傑作野球マンガだと思います。
連載時、1試合が長いと「このペースでいったらメジャーまでどれだけ待たせるんだ!」と心配になったものです。実際に主人公吾郎くんがアメリカに渡る『マイナーリーグ編』は2003年発売の47巻から。『メジャーリーグ編』は2008年に発売された66巻からスタート。このタイトル回収までながーいこと待たされました。メジャーリーガーになったときは身内のように嬉しかったです。
日本人の相次ぐメジャー挑戦を背景に、大きな野望を抱いて夢の舞台へと駆け上がっていく吾郎くんに胸を躍らせる野球少年が増え、一緒に成長していくという構図が、野球人気を後押ししたのではないかな、と考えました。
前田健太選手は、今作に影響を受けたそうで、世代によって愛読書が違うというのも野球マンガの面白い所ですね。
MAJORに続く本格リアル作品として、ドラマ化もした『ROOKIES』はすごくかっこよかったし、『おおきく振りかぶって』や『ダイヤのA』などでは青春を捧げる球児が爽やかに描かれ、野球人気をより盛り立てたのではないでしょうか。
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まとめ
野球マンガの歴史をのぞいてみて、その奥深さを感じることが出来ました。
前の記事でも触れましたが、新しいもの古いもの問わず、野球マンガは常に読者を惹きつけていて、その影響は一概に判別できるものではありませんし、作品を読んだ少年が、「明日から野球部にはいるぞ!」と速攻で影響をうけるかというとそれも難しい所です。
ですが、愛読書に名前を挙げている選手がいたり、グラフに傾向が推測できたりと、マンガの力を再認識させられて面白かったです。
かっちゃんが死んでショックで読むのをやめた『タッチ』始め、いろいろな野球マンガも読んでみようと思います。
余談
この記事、甲子園見ながら書いてたんですけど、もう冬が訪れます。
それから、せっかくグラフにしたけど、あんまり詳しいことが分からなくてどうにもならなかった甲子園の入場者数グラフをここで供養させてください。
夏の盛り上がりはもはや夏の風物詩。テレビで見る熱気に圧倒されますが、 思った以上に増減に波があって面白いなと思いました。
高校時代に駆り出されて行った県予選は、誰かが差し入れてくれたキュウリが美味しかったことと、コールド負けで、ほんのり悲しかったことだけ覚えてます。夏が来ると思い出す。